※機能蛋白異質-常時活性化 - Src
イラスト(1)左下のSrc 蛋白質は、ニワトリに肉腫を発生させる がんウイルスから、「がん遺伝子」として、世界で初めて発見された遺伝子の産物です。 本来は、正常細胞の中にあって、増殖や細胞形態に関係する遺伝子がウイルスに取り込まれて変異したものです。 正常時の Src蛋白質は、他の機能蛋白質と結合する部位が隠されていますが、変異した Src蛋白質は、結合部位が常に露出されていて、ビンキュリンなど、色々な働きをする蛋白質を活性化させ、増殖促進に働きます。
※Ras蛋白質の-常時活性化
Ras蛋白質は、レセプターからの「増殖せよ」シグナルの受けて、その情報を、下流の色々なシグナル伝達回路に中継します。 正常なRas蛋白質は、短期間で自らの持つ、GTPaseにより不活性になりますが、変異したRas蛋白質は、常に活性化した状態で、「増殖せよ」シグナルを送り続けます。 即ち、細胞増殖のアクセルを踏みこんだ状態が維持されることにより、がん化に関係してきます。こうした、異常なRas蛋白質を産生する 因となるRas遺伝子の変異は、ヒト膵臓がん、ヒト大腸がん、ヒト肺がん など、多くのヒトのがんで見つかっています。 H-Ras遺伝子は、ヒトの「がん遺伝子」としては初めて、膀胱がんからみつかりました。 驚いたことに、正常なRas遺伝子と比べてみると、たった一つだけDNAの塩基配列が違っていただけでした。 生命の糸は、本当に神秘なものですね。
※細胞増殖シグナル伝達に携わる機能蛋白質の常時活性化
Rasの下流で働く、細胞増殖に関係した機能をもつRafなどの蛋白質も常時活性化されると、がん化に関わってきます。
イラスト(2) 細胞核内 制御シグナル(がん化)編
イラスト(2)の左上で、p53とRBを抱え込んでいるのが、SV40という がんウイルスのより産生される大型T抗原と呼ばれるものです。 この抗原は、細胞増殖を抑制する主要な蛋白質であるp53とRBの機能を失活させることで、E2F転写因子の働きを高めます。即ち、この抗原の働きにより、細胞増殖のブレーキが壊れた状態になります。
※DNA情報の発現に関係する蛋白質の質的及び量的な変化
サイクリン依存性キナーゼ(CDK4 /CDK2) インヒビター(〜を阻害する物質)である、 p16は、CDK4と結合することで、サイクリンDを切り離して、CDK4を不活性化します。 また、p53の転写機能によって産生されたp21も、CDK2を不活性にします。その働きにより、RBの働きを保護して、細胞増殖を抑制します。 P16は、細胞が老化して、分裂寿命に達したりすると発現される蛋白質で、多くのヒトがんにおいて、p16が失活していることがわかっています。
※DNA情報の発現に関係する蛋白質の質的及び量的な変化 - Mcy
サイクリンDなど、細胞増殖に関する蛋白質の転写因子。その設計図であるMcy遺伝子の発現は、胃がん、肺がん、乳がんなど、多くのヒトがんで見つかっています。 Mcyが多く産生されると間接的ですが、RBやp53などの働きが制限されて、結果、細胞増殖ブレーキが効かなくなり、さらにアポトーシスが回避されるようなります。